日本帝国陸海軍無線開発史

大西成美氏の「本邦軍用無線技術の概観」をベースに資料追加

11-1 機上用無線機

11-1 機上用無線機
11-1-1 89式空1号無線電信機
89式空1号無線電信機は、航空機用長波無線電信機であり、送信機の入力150W、波長600乃至1500m、A1送信のみ可能、受信機は6球式で、波長600乃至3000m、A1、A2、A3受信可能、空中線は垂下空中線、電源は定速度風車附風力発電機であり、その重量は電信機11.5Kg、電源附属品共50Kg、これは技術研究所だけで昭和7年8月までに230組製造した。
参考
周波数 送信200から500Kc、受信100から500Kc、送信機出力75W、受信機は2-V-2のオートダインである。
英マルコニー社AD-6型の改良、国産化されたものと言えよう。
11-1-2 89式空2号無線電信機
89式空2号無線電信機は、航空機用長波無線電信機であり、送信機の入力150W、波長範囲40乃至80m、A1送信のみ可能、受信機は3球式で、波長範囲40乃至60m、A1、A2、A3受信可能、空中線は送信用とし固定空中線、受信用は固定及び垂下両用空中線、電源は定速度風車附風力発電機であり、その重量は送信機9.75Kg、受信機7.5Kg、電源機11.5Kg、その他24.5Kgであり、容積は送信機33×32枯れる24.5㎜、受信機は25×32×24.5㎜である。
これは技術研究所だけで昭和7年8月までに335組製造した。
参考資料
周波数 送信3.75から7.5Mc 受信5から7.5Mc 送信機はメニー回路自励発射、出力50W、受信機は201A 3本使用の0-V-2である。
11-1-3 94式空1号無線電信機
航空機用150W長波無線電信機は2座乃至3座機用を目的としたもので、送信機、受信機、管制器、電源並びに空中線装置から成り、送信機は陽極入力150W、電信を主とし、電話を副とした1段増幅のマスターオッシレーター式で、波長範囲500乃至1500m、受信機は高周波増幅2段、検波、低周波2段増幅から成る5球式で、波長範囲500乃至3000mである。
管制器は送受信転換、送受信電源分配及び電圧調整を行うものであり、電源は風力3電圧直流発電機を使用する。
これは昭和7年から研究に着手し、同年10月基礎試験を了し、昭和8年1月試製管制したものである。
その後改善を加え、94式空1号無線電信機として実用されるに至った。
参考資料
周波数 送信200から600Kc、受信100から600Kc、送信機は出力75W、MOPA方式、受信機は2-V-2のストレートである。
11-1-4 94式空2号無線電信機特型
2座乃至3座機用無線電信機としては、長短兼用のものが要望され、即ち、これが試作に着手し、完成したものが94式空2号無線電信機特型である。
これは出力短波75W、中波50Wであり、送信機は水晶制御兼自励式原振機、1段増幅機附のものである。
受信機は短波に対して高周波1段増幅、第一検波、中間周波2段増幅、第二検波、低周波2段増幅のスーパーヘテロダイン式、長波に対して高周波2段増幅、再生検波、低周波2段増幅の側音受信可能のものである。
これは昭和10年頃から実用に供せられ、その後改良を加え、94式空2号無線電信機特型として広く実用された。
参考資料
特型と称するのは、長、短兼用の無線機と言う意味である。
送信機 出力50W、CO(又はMO)PA
受信機は中波2-V-2、短波はこの前にRF1、Convを附しスーパー方式とする。
真空管はUY36、37、38系の6V管である。
 
参考文献
本邦軍用無線技術の概観 大西 成美
日本無線史 第十巻 電波監理委員会