日本帝国陸海軍無線開発史

大西成美氏の「本邦軍用無線技術の概観」をベースに資料追加

15-3 海軍航空機の無線帰投装置の考察

15-3 海軍航空機の無線帰投装置の考察
海軍通信戦史より抜粋 http://minouta17-02.blog.jp/
第3節 アリューシャン作戦の通信
p59 第2項 経過の概要
2.航空機通信
(ロ)第二機動部隊は大湊出撃の翌6月27日より連日濃霧の為、天測不能で第一次攻撃隊は推定位置により陸上攻撃に発進した。
2番艦隼慶飛行隊は濃霧の為侵入し得ず引き返し、1番艦龍飛行隊のみ進入に成功、計画どおりの通信が実施せられた。
次で第二次攻撃隊発進、攻撃終了後集合点附近にて敵戦闘機と遭遇空戦が実施せられた為に第二次攻撃隊は概ね単機帰投となり、艦爆隊の帰投通信は極めて多忙を極めた。
戦闘機の誘導に認ずべき艦爆隊の大部が機位に失したるため、戦闘機の大部はクルシー帰投中の戦闘機に誘導せられて帰投せるものもあった。
(ハ)艦爆中1機は機位を失し長波送信機被弾の為故障し、且クルシー搭載しあらず為に母艦より飛行機の短波の回度により、帰投を誘導したが、濃霧の為母艦を発見できず燃料つきて自爆した。
この為相当長時間短波を輻射し、敵に方位測定せられたる公算大なる為夜間第二機動部隊は韜晦運動を実施した。
※韜晦 トウカイ 自分の才能・地位・身分・行為などをつつみかくすこと。人の目をくらますこと。 「互に深く-して、彼豪族らに油断をなさしめ/慨世士伝 逍遥」
※1式空3号無線帰投方位測定機
本機は3座以下の航空機搭載用無線方向測定器である。米国のFarchild社が対日禁輸令発布以前に輸出していたクルシー式RC-4型をコピーしたものをクルシー式無線帰投方位測定機として採用したが、制式名称は1式空3号無線帰投方位測定機として主に日本電気(住友通信)や松下無線で製造された。
大戦を通し、零戦、99艦爆97艦攻など洋上作戦のため装備されていた。
受信周波数:長波170~460Kc/sHz,中波450~1,200Kc/s
受信機構成:スーパーヘテロダイン方式(13球)
電源:直流変圧器(入力12V)
空中線:枠型(ループ)回転式及び固定式(方位決定用)

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日本側攻撃用航空機と空母との関係
無線帰投方位測定機 
ドイツ(T式;テレフンケン)や米国(フェアチャイルド社製)の方式を採用し、航空機は空母などからの電波発信源を方位測定して攻撃や帰還位置を測定するものである。
欠点は、空母に帰還するには、空母から電波(長波または中波)を送信するため空母の位置を暴露することとなる。
このため、短時間の電波輻射と爾後の韜晦運動が必要となる。
日本では、この無線帰投方位測定機のシステム方式を根本的に改善することはなかった。
 
米国のP‐51Dの無線装置
VHF無線装置
パイロットは五つのボタンのついたコントロールボックスでVHFを操作する。
五つのボタンは、電源スイッチと四つの異なる周波数を選ぶためのA,B,C,Dのスイッチである。
これらの周波数は水晶発振であるので、飛行中調整することは出来ない。
パイロットは、一度に一つの周波数で送受信できる。
Aチャンネルは、CAA無線レンジとの交信用である。
Bチャンネルは、VHF施設のある大陸内合衆国の全てのタワーと交信するための国内共通の周波数である。
このチャンネルは緊急ホーミング用に使われることもある。
Cチャンネルは、隊内交信用である。
Dチャンネルは、通常の帰還に使う地域毎ホーミング用である。

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米国の戦闘機P‐51DのVHF無線装置では、機位消失などの緊急事態ではパイロットはBチャンネルのボタンを押下すればいい。
あとは、基地局である空母側が該当航空機の位置を方位測定し続けることにより飛行機の進行方向を把握し、無線電話にて帰路方位を指示することなる。
更に受信機が故障の場合には、長波のDetrola受信機の出番となる。
基地局では墜落まで位置測定を追随し、万一の場合には待機の潜水艦や飛行艇によりパイロット救出が行われる。
結果としてベテランパイロットの救出は再戦力化され、空軍力を更に強化することとなる。
戦略の相違と云えばそれまでだが、日本のように潜水艦は戦闘艦撃沈が目的であり、輸送艦に重きを置かず、飛行艇も敵艦隊の索敵が主であり、自軍のパイロット救出などの考えもしなかったからこそ、海軍通信戦史の記述にあるとおり、「艦爆中1機は機位を失し母艦を発見できず燃料つきて自爆した」とのことである。
もし、自軍パイロットがP-51と同等の装備があれば、1%でも生存の可能性がありことから自爆を選択することはなかったものと考えられる。
いかにベテランパイロットの生存が最重要事項であるとの認識がないまま、戦力を漸次消耗し最後には特攻へといきついたことは、断腸の思いで一杯である。
 
雑記(令和2年4月9日)
今テレビで新型コロナ対策が議論されているが、特措法発動のこの緊急事態宣言で国民の罰則を含む強い法律でないのは国民の選択の問題だとし、ある国会議員が責任転嫁の発言をしていたが、国民が選んだ国会議員に特措法の立法に関してどんな気概があったのだろうか。
与野党間でとおりそうな無難な法案を談合でつくった結果、都市封鎖や罰則もない国民へのお願いだけの法案ではないか。
国民の安全を第一という枕言葉をいう国会議員ばかりで、本当に命がけの使命を全うする気概があるのか。
国からの圧力で都の休業要請に百貨店も指定できずに、なんの外出自粛なのであろうか。
このような危機には、発想を転換した対処方法(韓国がやったような大量のPCR検査やドライブスルー、ウォークスルーなど;やっと韓国スマートフォン有機ELなどの開発力が理解できたし、今の日本にはもう無理なのか?)による抜本的な対処が必要であり、究極には都市封鎖しかないのではないだろうか。
既に答えは武漢で実証済みであるのだが・・・・。
都知事の活躍に期待したい。
※10年後にこんな文章読んでも誰も意味が理解できないことを切に願います。
リモート診療用にWebカメラを購入しようとしたら売り切れでどこにも在庫がない。
在庫がないのは中国でしか生産されていないことにあるが、マスクしかりなんでもかんでも安い労賃で生産する姿勢を是とすること自体そろそろ自戒する必要がありそうだ。
 
 
参考文献
本邦軍用無線技術の概観 大西 成美
BC624 - SCR522 Receiver https://vk2bv.org/archive/museum/bc624.htm
SCR 522 Transmitter - BC625 https://vk2bv.org/archive/museum/bc624.htm
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