日本帝国陸海軍無線開発史

大西成美氏の「本邦軍用無線技術の概観」をベースに資料追加

15-5 航空機陸海軍間の交信と対艦船通信(資料)

15-5 航空機陸海軍間の交信と対艦船通信(資料)
海軍通信作戦史 昭和24年3月 第二復員局残務処理部史実班からの抜粋
p123 (ヘ)陸海軍間の交信
開戦以来海陸郡両航空隊の嚮導作戦は屡々行われたけれども、総て事前の打ち合わせに依って行動し、直接飛行機帯同志が交信を行って戦闘に即応したと云うことはなかった。
この原因は
①異なった交信規程を使用したこと。
②陸軍は航空機通信に於て数字暗号通信を主として和字送受信教育を行わなかった結果、海軍の和字通信に同化するには再教育として非常な困難があったこと。
それで実際に直接交信が行い得れば非常な便利があったにも拘わらず、根本的解決を必要とした為に手を付けエズ、中央に於て両者が協議して嚮導作戦用の交信規程を制定はしたけれど(昭和18年〇月)之亦固塗的なもので実施部隊の実績に即せず実行されなかった。
所が戦況が緊迫して来て両軍の直接嚮導作戦が是非共必要となり、先ず陸軍航空部隊の一部(飛行第98戦隊及び10飛行第7戦隊)が海軍部隊(762空)の麾下に入って雷撃の講習を受け、陸軍雷撃隊を創設することとなったので、直ちに両者の直接交信が必要となり、陸軍に対して海軍交信規程による教育を始め約4か月で大体作戦に支障のない域に達した。
其の後両軍直接通信の必要は益々増大したが、戦況は日に急を告げ、全面的に改変して共通なものとする為には相当期間を要し、此のため作戦に障碍を来す懼がある為、纔に共用暗号書の編纂を行ったのみで遂に嚮導の交信規程は出来なかった。

第4項 通信戦備の概要
1.艦船並びに一般通信
p130 (ロ)護衛艦艇の隊内電話に航空機用隊内電話を採用し水上艦艇、航空機共同一電波使用に統一す
昭和19年秋迄の護衛艦艇は未だ海防艦駆逐艦等の編成なく個々の艦艇の寄せ集め式護衛船団にして、且1月の中殆碇泊休養の時間も少ない為、教育訓練の機も尠く思想の統一もなき為、之等船団部隊に於いては90式超短波及び2号電話の如き電波の漂変甚しき電話は隊内電話として取扱困難であったので、取扱容易なる水晶制御式航空機用隊内電話を使用せしむることとし、極く一部の特設艇を除き之を装備し且護衛部隊の隊内電波を水上艦艇及び航空機共41350kcに統一し航空機との緊密なる連絡に資した。
右電話は之を重要船団にも装備せんとし、電話員の養成を開始したが、時恰も米軍沖縄作戦を開始し、南方よりの還送航路を遮断せるを以て実現に至らずして終わった。
※ 1式超短波受話器

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※ 98式空4号隊内無線電話機

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参考文献
本邦軍用無線技術の概観 大西 成美
海軍通信作戦史 昭和24年3月 第二復員局残務処理部史実班