日本帝国陸海軍無線開発史

大西成美氏の「本邦軍用無線技術の概観」をベースに資料追加

4-2-1-1 87式(15年式)1号無線電信機

4-2-1-1 87式(15年式)1号無線電信機
英マルコニ製YC型無線機の改修型であるZC形無線機をそのまま輸入し、制式として採用したのが15年式1号無線機であり、これらの受信機、波長計、蓄電池等に改修を加えたのが87式1号無線機である。
本機の重要諸元は次の通りである。
用途    軍通信隊用
通信距離  250Km
周波数   送信  167~333Kc
      受信  158~375Kc
方式    送信  MT-1型真空管による自励発射(整流菅MR-1)
      受信  1号型真空管4箇使用の1-V-2
          15年式にあってはV-24 3箇 QX1箇使用の1-V-2
空中線   逆L型 H=9m L=30m
接地    アース網 4枚
電源    送信用
       発動機 21/4HP 4サイクル
       発電機 AC 95V 1Φ500VA DC 25V 375W(充電用)
      受信用
       6V鉛蓄電池及び90V乾電池
       15年式にあっては6Vアルカリム電池及び37.5V乾電池
整備数   15年式として130を輸入、87式として改修した機数は不明
YC型無線電信電話鴇について運搬(駄載)試験, 通信試験など一通りの試験を行い,おおむね所期の機 能を有していることを確認した後に,前述したような 改修を実施させてZC型無線電信織として輸入した。
輸入した楔器は,移動性に影響を及ぼすような改修 は行わなかったので,運搬試験の必要性はなかったが, 波長の範囲を変更したため通信関係の試験は行う必要 があった。
そのため,1923年(大正12年)6月に混信 分離試験を.1924年8月には通信試験が実施された。
通信試験は,それまではオーディビリティー(audibiJity:聞きとれること‥個度率)を測定するだけであったのを,試験成績を判定する上で確実な成果 が期待しにくいということで,聴度率の測定を行うと 共に暗号電報を多数送受させて,その誤字と脱字の状況調査をした。
なお,聴度率の測定法として.暗号電報を受信可能な限度まで測定するように改めた。
試験の結果から、ZCl型無線電信機の通信距離は、YC2型の無線電信電話機に就て信じられていた300Kmは到底望み得ず、250Kmとするのを適当と認められるに至った。
次いで既述のような理由に依り、既述のような受信機、波長計、蓄電池等に一大改修を加え、其の竣功を俟って大正14年(1925年)6月通信試験及び混信分離を行い、概ね所期の機能を有することを確認した。
制式上申に関する手続き?々遅延しなお細部に就て修正すべき所もあったので、13式を15年式に改め、改修機は87式として制式制定上申、昭和3年(1928年)制式として制定されたのである。
 
参考文献
本邦軍用無線技術の概観 大西 成美
日本無線史 第九巻 電波監理委員会
十五年式一號無線電信機取扱法 昭和3年4月 兵用図書株式会社