日本帝国陸海軍無線開発史

大西成美氏の「本邦軍用無線技術の概観」をベースに資料追加

4-1-2 Y型機上用送信機及びA型地上受信機

4-1-2 Y型機上用送信機及びA型地上受信機
本機の重要諸元は次の通りである。
用途    飛行機用
通信距離  数10Km
方式    送信 ロータリー火花式
      受信 鉱石受信機式
電源    風車発電機
      交流1Φ 900c/s 4.500R.P.M 50V 125W
空中線   全長100m 垂直型
この無線機は、機上送信→地上受信という一方向通信のための機器で、当時の功績受信機では機上の振動、騒音の中では受信は不可能であった。
正式とはならなかったがフランス陸軍の標準型であり、最初に実用化された飛行機用無線機である。

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接続図のとおり、極めて簡単な構成であるがスマートに出来ている。
昇圧変圧器T1は一次側のタップを切替えて電力を調整している。
廻転火花間隙Rは風力発電機Gと同一軸上にあり、発電電圧の各サイクルの最高値において火花間隙が近ずいて放電するよう構成されているから、この電極の数を変えることによって毎秒の火花回数を変えることができる。
火花回数は受信側においては受話器振動版の振動数となるから音色となって表われる。
故に同一周波数の送信電波を使用しても、各飛行機の音色を変えておけば分離して受信することが出来る。
送信周波数はL1のインダクタンスと、空中線の長さとによって決定されるから、空中線を所要の長さ捲下すため標示がしてあり、940~2150Kcの送信には空中線の長さを調整して使用する。
940Kc以下680Kcまでの送信の場合には、左図のとおり接続を変更して、L1Cよりなる閉回路の周波数を発射するが、空中線回路の同調を見るための電流計を附加する。
A型受信機は空中線回路と、2次側回路何れも同調する鉱石受信機であるが、待受の位置においてはSにより2次回路の可変コンデンサーを外して選択度を下げる、呼出を受けた後はSを接続して選択度を上げ、混信分離を可能ならしめる。

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参考文献
本邦軍用無線技術の概観 大西 成美
日本無線史 第九巻 電波監理委員会