日本帝国陸海軍無線開発史

大西成美氏の「本邦軍用無線技術の概観」をベースに資料追加

11-1-7 96式空3号無線電信機、2式空3号無線電信機(N3)及び18試空3号無線電信機

11-1-7 96式空3号無線電信機、2式空3号無線電信機(N3)及び18試空3号無線電信機
主として3座機用電信兼電話機であるが、多座機にも搭載された。
送信機は入力150w、周波数範囲、短波5000乃至10000Kc、中波300乃至500Kcの長(中)短波兼用のものである。
送信機は水晶制御兼自励式原振機、多段増幅機附のもの、受信機は短波に対し、高周波1段増幅、第一検波、中間周波2段増幅、第二検波、低周波2段増幅のスーパーヘテロダイン式のもの、長波に対して、高周波2段増幅、再生検波、低周波増幅2段附の間隙受信機及び側音受信可能のものである。
重量は52Kg、通達能力は対地上約700浬とせられている。
本機の重要諸元は次の通りである。
用途   3座機用
通信距離 約700浬
周波数  短波、5000乃至10000Kc
     長(中)波300乃至500Kc
送信機  入力150w
          OSC   Buff   PA
     真空管 UX-47A-UX-865L-UV-816D
     電源  回転式直流変圧器(入力12V)
受信機  方式 スーパー RF1 IF1 AF2
         RF     Conv      IF    Det    AF    AF 
     真空管 UY-36A-UY-37A-UY-36A-UY-37A-UY-37A-UY-36A
          ↑ ↓―――――――――――↑
      長波受信  UY-39A
     電源  回転式直流変圧器(入力12V)
空中線  固定空中線及び垂下式空中線
整備数
  
周波数5から10Mc及び300から500Kc
送信機は出力75W、UX47A-UY865E-UV816Dを使用する。
プレート電源1500V及び500Vコンバーター
受信機は長波の時は2-V-2、短波受信機時はこの前にRF1段及び周波数変換を附したスーパーでUY36、UY39、UY37を使用する。
電源は135Vコンバーターである。

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空中線同調器

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受信機

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送信機 

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第二作戦時期(昭和17年5月より18年2月まで)
第二作戦に於てソロモン方面が主戦場となるや、以外に周波数の問題が需要となり特に夜間短波不達が大きく作戦に影響を及ぼして来た。
南方航空作戦で特に夜間飛行が多くなって見ると、これまで常用していた5000乃至10000Kcの電波では、極めて通達が悪く、これがため索敵機の敵発見報告が不達となり、作戦に齟齬を来すことが頻発した。
これが重大問題となり、兵器に是非共、中波帯を附加する必要が起こり、直ちに研究実験に移り、昭和17年末から96式空3号を皮切りに中波帯(2500乃至5000Kc)を附加された。
これが96式空3号無線電信機改1である。
 
1式空3号無線電信機は、96式空2号と同空3号の特徴を合わせ、機上用優秀電信機を得る目的で試作されたもので、入力300W、重量70Kgである。
 
2式空3号無線電信機(N3)
周波数2.5から20Mc及び300から500Kc、送信機は出力A1 80W、A3 20W(サプレッサー変調)、真空管FZ064A-FB325A
受信機はRF1-IF2の10球スーパー、中間周波数635Kc、真空管は全てFM2A05Aを使用する。

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18試空3号無線電信機
昭和18年度試作兵器(18試兵器はガダルカナル島を転機として、敵が反抗を開始し、莫大な物量を注いで来たのに対し、我が方はこれに対応するに必要な兵器もこれまでのような精巧一点張りで生産に隘路を生ずる方法では、間に合わなくなり、性能を左程落とさないで、量産し得るように、材料や製品の規格統一並びに構造の簡単化を計る目的である。)の研究実験により、18試空3号無線電信機が試作された。
用途としては、戦闘機以外は本機が採用され、周波数範囲は、短波2500乃至10000Kcと長波300乃至500Kc、送信機入力300W、その重量は45Kg、通達能力対地上1500浬である。
なお、遠隔管制も可能とし且つ各機種に共用し得る如くする。
また、2式空3号を簡略化して製作している。
 
参考文献
本邦軍用無線技術の概観 大西 成美
日本無線史 第十巻 電波監理委員会
アジア歴史資料センター
Yahooオークション出品情報
米国国立公文書館