日本帝国陸海軍無線開発史

大西成美氏の「本邦軍用無線技術の概観」をベースに資料追加

6.電波兵器

6.電波兵器
陸軍における所謂電波兵器とは、対航空機用の超短波警戒機、射撃用標定機を主軸とし、海軍におけるがごとき多種のものを含んでいない。
開戦前に超短波警戒機甲(線警戒方式)を完成、整備を終えたほかは、殆ど戦時中の研究になり或は押収敵機材を参考として実用化が図られた。
 
6-1 超短波警戒機
超短波警戒機には方式を異にする甲、乙の2種がある。
甲はいわゆる線警戒方式で、送、受信所を結ぶ警戒線上に、常時800サイクル変調のA2を流しておく。
もし航空機がこの線に接近すれば当然反射波を生じ、常時受信中の地上波との間の位相差にわりビートを生じ、受信機出力に変動を与える。
これを高声器、指示計器等により検知するものである。
方式の性質上警戒機上下左右10Km程度の範囲の航空機を探知するに止まり、前方遠距離に対する警戒は不能、またその警戒線上における位置を知ることも不可能であるが、生産、運用が容易であるため早く実用化され、日本本土周辺はもとより、野戦においても実用された。
日本海を隔てて山口県萩-朝鮮浦項の間、島根県浜田-朝鮮尉山間等の遠距離警戒線なども設けられた。
乙は現在のレーダーヘと同じくパルス波を発射し、航空機よりの反射波を受信する前方警戒方式のものであり、ブラウン管上に反射波を標示し、その間隔により距離を、空中線の指向方向により方位を探知するものである。
大型固定用の要地用と、移動用の野戦、船舶用がある。
 
6-2 標定機
超短波警戒機の精度を向上し、対空射撃用として使用するもので、パルス巾を短く、空中線指向特性を向上するため、使用周波数を高くしている。
住友通信工業製のものを1型、東芝製のものを2型と称した。