日本帝国陸海軍無線開発史

大西成美氏の「本邦軍用無線技術の概観」をベースに資料追加

4-3-14 94式対空1号無線機

4-3-14 94式対空1号無線機
昭和6年(1931年)度から研究に着手した。
本機は94式及び96式移動無線機の先頭を切って研究を開始されたもので、当時水晶制御方式送信機は固定式無線機に限られていたから、基準模範を得るに便利だったからである。
そして概ね昭和8年(1933年)度には研究を完了した。
本機は遠距離「と云っても移動式無線機では1,000Kmである」空地連絡通信の対空用を主用途として研究されたが、固定無線機用の無線機をも兼ねしめる方針を執った。
而して対空用としては爆撃基地に設置するし、固定無線機用としては頻繁な移動は考えられないので、仮令鈍重となっても設備を最高度にした方が望ましいと云う見解の下に、運搬具の許された範囲を完全に剰さぬように設計した。
航空部隊はこの鈍重の点、送信起動に稍々時間を要する点、電源の複雑な点等に不満であった一方、当時空地連絡通信の要求最大距離1,000Kmは、多少の通信不確実性はあっても概ね対空2号無線機と飛2号無線機とを以て充足し得ることが数次の試験の結果判然したので、試作当時3機を整備したのみで、爾後飛1号無線機と共に不整備器材としたのである。
これに反し地上部隊用としては、固定無線隊用として、満州事変当時の応急整備から引き続き整備された。
本機の重要諸元は次の通りである。
用途   対飛行機通信用
通信距離 1,000Km
周波数  送信  1.200~13,350Kc(常用3,100~6,700Kc)
     受信  140Kc~15Mc
送信機  出力 A1 1.0~1.5Kw
          OSC  Buff  Buff  PA
     真空管 UY47A-UX860-UX860-UV815×2
     電源  30Hp 4サイクルガソリンエンジン
         2,000V5Kw、12V1Kw発電機
          220V10KwDC発電機
             220V10HpDCモーター
受信機  方式 スーパー RF1 RF2 AF2 (94式1号無線機のものに同じ)
         RF Conv IF  Det  AF  AF 
     真空管 134-135-134-111A-109A-133A
     電源  平角3号×2(1.5V) B4号×3(135V)C4号(-6V)
空中線  逆L H=12m、L<35(使用周波数に応ず)
     地線 35m 8条
無線機接続要領図

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送信機
 
参考文献
本邦軍用無線技術の概観 大西 成美
日本無線史 第九巻 電波監理委員会
無線と実験 昭和17年4月