日本帝国陸海軍無線開発史

大西成美氏の「本邦軍用無線技術の概観」をベースに資料追加

5-1-1 94式3号型特殊受信機

5-1-1 94式3号型特殊受信機
戦場に於ける無線諜報に関しては指揮官の作戦指導上極めて有効なる資料を提供し得るものなることの認識、移動性の要求上軍独自の研究に候つの外、流用し得る受信機なきこと、部隊装備のため制式として動員用兵器の整備すべきこと等研究開始必要の諸条件が整ったので、94式各号無線機の研究と併行して研究された。
而して具備せしむべき性能に就いては凡そ戦場に於ける情況を想定し作戦上の要求から割り出したものを以てした。
なお兵器行政の面からは、移動式の傍受機は当然固定式としても使用出来るから、将来実用部隊の要求があれば、固定式の要求に対しても移動式を充当すれば十分であるとの考もあったようである。
この移動式傍受用受信機は概ね94式各号無線機と歩調を合わせて研究が進められ、これらと同時に94式3号型特殊受信機として制式制定されたのである。
94式3号型特殊受信機は長波受信機と短波受信機とから成り立っている。
本機の重要諸元は次の通りである。
長中波受信機
周波数   12~2,000Kc
方式    オートダイン 2-V-2
真空管   RF  RF  Det  AF  AF
        134-134-109A-109A-133A
電源    平角3号×2(1.5V) B18号×6(135V) C4号(-6V)
短波受信機
周波数   1.0~20Mc
方式    スーパヘテロダイン RF1 IF2 AF2
真空管   RF Conv  IF  IF  Det   AF  AF
      134-135-134-134-109A-109A-133A
電源    長中波受信機に同じ
整備数     150
長中波受信機はプラグインコイルとし、周波数の低い部分にあってはフェライトコアー仕様、トロイダル捲としたものである。
短波受信機はターレットによりコイル切替、中間周波数は457Kcである。
何れも縦長の構成である。
 

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本文
 
参考文献
本邦軍用無線技術の概観 大西 成美
日本無線史 第九巻 電波監理委員会
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