日本帝国陸海軍無線開発史

大西成美氏の「本邦軍用無線技術の概観」をベースに資料追加

8-1 長波送信機

8-1 長波送信機
8-1-1 92式3号及び4号送信機
概要
自励連結式の所謂簡単式長波送信機(3号は出力1KW、4号は出力0.5KW)で優秀品とは云えないが、十年以上も使い慣れたもので艦船及び陸上に装備されて実用されている。
92式3号送信機  出力1Kw 自励
92式4号送信機  出力500Kw 自励

8-1-2 98式1号及び同2号送信機
概要
各陸上電信所に長波送信機としてM式1号及び同2号、12式1号及び同2号送信機が装備されていたが、真空管の進歩発達と共に、続々と優秀新型真空管出現し、これらの送信機は旧式に属し最早優秀品と認め難きに至ったこと並びに陸上電信所の整備拡充に際し、新たに多数の送信機を必要とすること等のために、東京芝浦電気株式会社をして新型式長波送信機を製造せしめることなり、玆に完成したのが98式1号及び同2号送信機である。
いずれも原振器附で電波安定度も良く多数製造せられた。
空中線電力は1号がA1電波で5KW、A2電波で2.5KW、2号がA1電波で2KW、A2電波で0.6KWである。
98式1号送信機  出力5Kw MOPA 陸上用
98式2号送信機  出力2Kw MOPA 陸上用

8-1-3 零式03号送信機
概要
船橋送信所には大電力長波送信機として、大正末期に英国マルコニ会社から購入した特M式送信機(入力50KW)と、昭和初期に米国RCA会社から購入した特A式送信機(入力150KW)とが装備され、実用されていたが、いずれも励振装置附であるが、旧式のものであり、殊に特A式は多数の真空管を並列に使用する関係上作動不安定で、通常30KW程度の電力で働かせる外、途ない有様で、これまでも屢々改善を目的として調査されたが、支那事変中船橋送信所の大改装工事が実施されるに当たり、新たに周波数20乃至50kc空中線電力150KWの零式03号送信機を横須賀海軍工廠担当で製造装備するこことなった。
資材不足の折柄で特A式の部品材料、その他在庫材料を出来るだけ利用する方針で設計製作を行ったものである。
割合に手際よく纏まり、優秀な成績を以て太平洋戦争勃発前に公試を完了した。
0式03号送信機  出力150Kw 20~50Kc 船橋送信所に装備された。
 
参考文献
本邦軍用無線技術の概観 大西 成美
日本無線史 第十巻 電波監理委員会