日本帝国陸海軍無線開発史

大西成美氏の「本邦軍用無線技術の概観」をベースに資料追加

4-3-3 96式2号戊無線機

4-3-3 96式2号戊無線機
昭和10年(1935年)度から研究に着手した。
要求された性能の類似から主要部は94式2号丁無線機と同一のものとすることに努めた。
本機は装甲軌道者(鉄道作戦に使用するもので装備により鉄道-広軌-線路上も装甲し、又必要に応じては装軌して線路外を普通戦車の如く行動し得るものである。
装輪から装軌へ並びにその逆は本車の機関動力により至短時間に転換し得、我が陸軍独自のものと謂えるものである。)に装備し、走行間通信を実施するものであるから、機関に電磁遮断を施したこと勿論である。
本機の重要諸元は次の通りである。
用途   装甲軌道車用
通信距離 約40Km
周波数  送信  900~5,500Kc
     受信  140Kc~15Mc
送信機  出力  A1 25W  A3 12W
     方式  水晶(又は主)発振-電力増幅陽極変調 
          OSC   PA
     真空管 UY510B×2 UV651×1 UX250×2
     電源  直流変圧器及び蓄電池
         12V500V直流変圧器
         12V蓄電池
受信機  方式 スーパーヘテロダイン
     RF-MIX-IF2段-Det-AF 自動音量調整付 
     真空管 UY37×1 UZ78×3 Ut6A7×1 Ut6B7×1
     電源  12V250V直流変圧器 12V蓄電池
空中線  逆L型 H=2m、空中線条 長さ7m
     接地 車体
整備数  20
普通電話のほか、簡単な周波数反倒方式による秘密電話通信が可能である。
 
参考文献
本邦軍用無線技術の概観 大西 成美
日本無線史 第九巻 電波監理委員会