日本帝国陸海軍無線開発史

大西成美氏の「本邦軍用無線技術の概観」をベースに資料追加

5-3-1 95式電信機

5-3-1 95式電信機
有線通信に無線技術を応用して、リレー等の必要を排除し、小型軽量且つ高感度の器材を完成した。
またこのため、通信が従来の有線通信におけるサウンダーむの仕様から、無線通信におけると同じく可聴断続音による方式となったため、有、無線共通の訓練を以て通信手を養成することが可能となった。
すなわち95式電信機は左図のごとく構成されている。
真空管はスページチャージグリッド管UX111Bであり、対所でキーを押さえないときにはスページチャージグリッドの電位は0であるためプレート電流はカットオフされて動作しない。
対所でキーをおさえたときには、スページチャージグリッドに+6Vの電圧が加えられるため、プレート電流が流れ、可聴周波の発振を起こし、受話器または受声器で受信される。
発振周波数は700pF可変コンデンサーにより調整可能である。
線路に直列に入る8.5Hチョークコイルはローパスフィルターをなし、電話或は誘導音の混入を防止する。
このように本電信機は電圧のみにて動作し、電流を必要としないため92式小被覆線による線路にあっても6V送信電池にて約200Kmの通信が可能であり、電池電圧を増加すれば更に通信距離を増大することが可能である。
のち改修95式電信機として、高声器と受話器を切替とし、真空管及び各電池電圧を測定可能なるごとくし、また前記送信用追加電池端子及び線路の容量に基く余韻を防止するための電池端子を有するものに改修された。
 
参考文献
本邦軍用無線技術の概観 大西 成美
日本無線史 第九巻 電波監理委員会
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