日本帝国陸海軍無線開発史

大西成美氏の「本邦軍用無線技術の概観」をベースに資料追加

電探指示装置丙1型復元作業

電探指示装置丙1型復元作業

 

三式一号電波探信儀三型は、国内に2点現存が確認されているが、いずれも、指示装置は現存していない。 

このため、当面の目標については電探指示装置丙1型の復元を行い、最終目標としては、送信機、受信機そのものを新規に復元し、最終的には試験電波でもいいから発射して、Aスコープによる反射波を見てみたい。だいぶ古い話だが、アマチュア無線の144MHz帯の最後部のバンドはレーダ試験用に割り当てられているはずだ。 

そういう意味で、手始めに新規に電探指示装置丙1型の復元を行うこことした。 

基本的なキーワード 

まず、レーダの基本事項について以下簡単に説明する。 

海軍: 電波探信儀
陸軍: 電波警戒機(索敵用)、電波標定機(測定用)
 

当時の日本の電波探信儀は、PPI方式ではなく、Aスコープと呼ばれるものである。 

数学的根拠については以下のとおりである。 

L = S / 2 * C  

     L:距離、S:時間、C:光の速度(30万キロメートル/秒) 

L=300Kmの距離は、S=0.002秒かかることがわかる。したがって、500Hzのパルスが必要となる。 

また、L=20Kmの距離は、S=0.00013333秒かかることがわかる。したがって、7.5kHzのパルスが必要となる 

三式一号電波探信儀三型では、主発振に500Hzのパルスを使用し、最大300Kmの距離を監視することができる。ただし、帰線消去の関係により、240Kmが観測の限界となる。 

また、本機の特徴である目盛管制については、指示器のブラウン管に20Km単位に目盛表示することができる。 

なお、海軍レーダ徒然草に具体的なブラウン管の表示イメージがあるので参考にしてほしい。 

この目盛管制機能については、日本のオリジナル技術ではなく、フィリピンで鹵獲した米軍使用のSCR-268型からの転用技術ではないのだろうか。将来、米国の資料との比較・検証をしてみたい。 

指示装置の回路構成について 

         LCブロッキング発振 → プレート検波・微分回路(X軸偏向) 

          (7.5kHz)同期 

            ↑ 

500HzLC自励発振 → 鋸波成形 → 増幅 (X軸偏向入力) 

     ↓ 

      移相 → パルス成形 → 増幅(送信機同期パルスへ) 

パルス受信増幅 →(Y軸偏向入力) 

回路の特徴 

指示装置については、ある意味単なるオシロスコープであることから、戦前から製造技術については十分経験しているはずである。このため、鋸波の発生については基本的にはサイラトロン〔定番のTY-66G〕を使用すれば簡単なはずだが、LC自励発振回路を採用している。鋸波の成形には、当時最新の過渡現象を利用している。また、目盛管制に6C6を2本も使用し、テレビジョンの垂直同期回路同様に7.5kHzの発振に500HzLC自励発振からの同期を取っている。本来なら、ブラウン管の目盛スケール板に20Kmの表示マークをつける程度の話に見えることなのだが・・・。 

 

復元作業について 

500HzのLC自励発振回路については、点火から40分程度で安定動作したが、許容誤差2%以内になんとか入る程度の精度であった。やはり、音叉発振器のほうが精度が高いのではないだろうか。試せないのが残念である。 

 

1.電探指示装置丙1型取扱説明書(昭和20年4月2日の日付) 

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11.目盛管制のイメージ

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10.水平鋸波(不完全)

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9.水平発振

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8.試験組立用バラック

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7.フィリピン鹵獲の米国製レーダ

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6.フィリピン鹵獲の米国製レーダ

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5.フィリピン鹵獲の米国製レーダ

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4.回路図

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3.ブロックダイヤグラム

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2.電探指示装置丙1型装置の概観

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