日本帝国陸海軍無線開発史

大西成美氏の「本邦軍用無線技術の概観」をベースに資料追加

Detrola受信機

Detrola受信機
ジャンク★コレクター必見!航空機パーツ?真空管受信機 DETROLA 
オークション > ホビー、カルチャー > 航空機 > 廃品、放出品
状態:中古
個数:1
開始日時:2017.02.27(月)17:56
終了日時:2017.03.05(日)21:56
自動延長:あり
早期終了:あり
返品:返品不可
入札者評価制限:あり
入札者認証制限:あり
最高額入札者:なし
開始価格:38,000 円
オークションID:d215974972
入札件数:0
入札履歴:0 
残り時間:4日 詳細
現在価格 38,000円(税 0 円)
 出品者情報exproud_inc
評価:5964 (5972 8 )
出品地域:愛知県
商品説明
商品名 ジャンク★コレクター必見!航空機パーツ?DETROLA 真空管ラジオのようなコンディション 4:ノンサポート・ジャンク
※コレクターから航空機の計器盤、航空機のメーター等とともに引き上げたものです。
いくつかの真空管から成り、真空管ラジオのような構造で、何かの受信機のようです。
盤面には「DETROLA」との記載があります。
サイズ:幅×奥行×高さ 約11×16×11cm
重量:約0.9.kg
※現物採寸ですので誤差はご了承下さい。
本商品に詳しいスタッフが不在な為、ノンサポート・ジャンク品として出品致します。
本品はプロフェッショナル向けの商品です。深い知識を有する方のみご入札ください。

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「ジャンク★コレクター必見!航空機パーツ?真空管受信機 DETROLA 」のタイトルで2017年2月にYahooオークションに出品されていました。
DETROLA受信機といっても、日本の方でご存じであればかなりのマニアの方でしょうか。
本機もジャンクといっても、日本で大改造されており、中身は正面のパネルとシャーシとバリコン以外は戦後日本製の備品に置き換えられています。
本来長波(200Kcから400Kc)の1-V-1のストレート受信機ですが、中波のスーパーヘテロダイン受信として改造されています。
商品としての価値はほぼありませんが、本機について追跡調査を行います。
DETROLAでネット検索すると、Detrola Radio & Television Corporationがヒットし、以下の情報が判明しました。
(参考情報 The Official Homepage of Detrola Radios  http://detrola.tripod.com/
Detrolaは、1936年の会社の規模では、「米国で6番目に大きいラジオメーカー」であるといわれ、約1,000人の従業員と多くの都市および海外の営業担当者がいました。
1941年、デトロラは、特に地雷探知機、航空機ラジオ、船舶用電気パネルなど、軍需品のサプライヤーになりました。
第二次世界大戦後、デトロラは民間の生産を再開しましたが、テレビ市場に進出しないことを決定しました。しかし、生産コストが高くなり、深刻な組合の問題もあり、同社は大手メーカーに追いつくのに苦労しました。同社は、1948年の夏に有力な自動車無線製造事業をモトローラに売却し、その後1948年にすべての製造を停止しました。
 
国内のネットで調査すると
P51操縦士訓練教本 (九州大学航空模型部のホームページ内の一コンテンツ)
の中の無線装置の項目にDetrolaの内容がありますので抜粋して紹介します。
The Detrola
Detrola は、長波受信機である。
それは、合衆国全体のタワーとRangeStationの送信周波数をカバーする200‐400キロサイクルの間で作動する。
 

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Detrolaの操作は簡単である。
ステーションセレクターノブと、オン-オフスイッチと一体のボリュームの操作だけである。
ヘッドセットは、VHF装置につながれているが、Detrolaを使うときにつなぎ替える必要は無い。
DetrolaはVHF装置と中でつながれているので両方のユニットが一つのヘッドセットで使える。
パイロットは、DetrolaとVHFを別々にあるいは同時に使うことが出来る。
両方のセットをオンにすることでDetrolaの受信だけでなく、パイロットが使っているいずれのVHFチャンネルでも使える。
Detrolaに極端な長距離受信を期待してはいけない。
約8,000ft以下ぐらいの高度を飛んでいる時は、通常50マイルぐらいである。
高度が上がると75マイルぐらいまで伸びる。
好条件下では更に距離は伸びるが、これぐらいが当てに出来る距離である。
Detrolaは受信のみであることを明記しておくこと。
この装置でタワーやレンジステーションに話し掛けることは出来ない。
パイロットがタワーやレンジステーションと話しが出来るのは、VHFセットのみである。
これが両方を同時に使えることの利点である。
パイロットは一つで受信しながらもう一つで送信や受信が出来る。
ここで本機はP-51Dマスタングに搭載された受信機であることがやっと判明しました。
P51操縦士訓練教本の無線装置、無線航法、ホーミング(帰投)をみると旧軍の航空機の電子装置が如何に貧弱であったか良くわかります。
ただし、Detrolaの作りをみるとシャーシやパネルなどの安っぽい造りであり、日本製のほうが作りはいいのがわかります。
ようは設計思想の問題なのだろう。
無線航法でいえば、日本は戦前ドイツや米国からの輸入品(クルシーなど)を国産化しましたが、これらの機器は航空機の機上に航法機器を搭載し、機上から航路を測定していいます。
この欠陥は太平洋上で作戦する場合、航空母艦などの艦船から誘導電波を発信するため、艦隊の位置を暴露する可能性があるという弱点かあります。
一方米国では無線航法の方式としては、航空機に電波を発信させ、艦船や陸上基地の方向探知機で航空機の位置を測定し、誘導する方式を採用しています。
しかも、VHF(100Mcから150Mc帯)の4チャンネルの無線電話機を通話と航法に利用し、もしVHFの無線電話機の受信機が壊れていても、バックアップとして長波のDetrolaの出番となるという仕組みです。
こうすれば、墜落まで航空機の位置を把握し、しかも飛行艇、潜水艦などによりパイロットの救助が可能となります。
日本では、航空機の通信機器は基地との通信を短波帯し、隊内通信のみVHFを利用しています。
無線通信機器としてVHF帯をメイン利用できなかった原因は、長距離通信は短波か長波で利用することしか頭になかったことと、無線電話への不信、VHF帯の専用の送信菅がなかったことなどが原因のようです。
VHF帯は直線電波であれば、高度があがればあがるほど通信距離は伸びることになります。
ただし、平行して開発していた電探(レーダー)では、VHFの専用の送信菅も多数開発されていましたが、如何せん無線と電探は開発部門も異なり、相互の技術利用がなかったのが原因かもしれません。
旧軍の傍受用受信機でもVHF帯の仕様のものは見当たりません。
ということは、米国戦闘機の無線傍受はできず、唯一B29などの大型機の短波通信のみ傍受できたということになります。
 
参考 電探タキ3の送信菅例
 
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最後にメーカーの本音を掲載しておきます。
東京芝浦電気株式会社八十五年史(昭和38年発行)からの抜粋
終戦直後は前記のテレビ計画のように、文化国家の再建というような高度の希望もあったが、日時が経過するにつれて敗戦の現実が重くのしかかり、通信機製品の前途は、一部をのぞいてますます困難となった。
この困難にさらに拍車をかけたものに、太平洋戦争におけるわが国の電波兵器に対する不信があった。
これは国の誤った方針が技術や生産を破壊したものであるが、一般にはメーカーに責任があるように考えられ、日本の電子工業が劣等であるとの概念が世界に喧伝され、通信機工業の再起に大きな打撃をあたえたのであった。
 
 
参考文献
Wikiedia https://en.wikipedia.org/wiki/Detrola_Radio_%26_Television_Corporation
P51操縦士訓練教本 https://sites.google.com/site/kumacbox/
東京芝浦電気株式会社八十五年史(昭和38年発行
Yahooオークション出品情報